<< 禊ぎ | 御礼申し上げます >>
夏休みにおすすめ本

風のささやきを聴け



我々の半身は火、半身は夢である。
我々は、母なる大地にミアヘイユン・・・全宇宙・・・を映す現身(うつしみ)
この地上に経験するためにやってきた。
我々は、果てしなくめぐる季節の中で、ちらと閃(ひらめ)く手の一振り。
太陽の幾百万の火に束の間だけ身をさらし、
その輝きを映す、すべてのものを語らう。

ファイアー・ドッグ(シャイアン族)



c0156749_10353659.jpg



私の大好きなネイティブアメリカンの本のひとつです。
ここで私があれこれ書くより、本の内容を少しだけ皆さんに紹介します。
興味のある方は一読下さい。
興味のない方はスルーして下さいね^^;



祖母から教わったいちばん大切なことにはとても深い意味があって、
それは今でも僕の中に、僕が細胞結合と呼ぶところの形で存在している。
すなわち、文字どおり僕の体の一部なのだ。
それはある日、学校の帰り道で起きた。
10代の少年の一団が、インディアンの鬨(とき)の声を真似して、祖母をあざけりだした。
「武器の斧と羽根はどこへ置いてきたんだよ?」と彼らはやじった。
祖母は僕の手をしっかり握り、少し足を速めはしたけれど、
それをのぞけば少年たちを気にしている様子はなかった。
しかし信じがたいことが起きて、僕はすくみあがってしまった。
少年のひとりが祖母の顔に唾を吐きかけたのだ。
祖母は何もしなかった。
唾をぬぐおうとすらしないで、黙ってそのまま歩きつづけた。
まるで何ごともなかったかのように。
僕は家についてもまだ、祖母がされたことの衝撃でぼう然としていた。
すると祖母は、僕を座らせ、その出来事について話しはじめた。
祖母と真正面から向き合うと、頬にさっきの唾の乾いたあとが残っているのがわかった。
「この世の中には、あたしたちの生き方を知ろうとも、理解しようともしない人たちがいてね。
でも大切なのは、自分は誰であるかを知って、それを誇りに思うことなんだ。
おまえは、どうしてあたしが唾をぬぐわなかったのか不思議に思ってるんだろ?
それはね、唾なんてすぐに乾くってことを知ってもらいたかったからさ。
そうさ、唾はいずれは乾く。でも、おまえの心は絶対に死なない。それをわかってもらいたかったんだよ」 
年のせいで、祖母の顔には使いこんだ革のように、たくさんの深いしわが刻まれていた。
けれど、祖母のしわすべてに物語があり、そのしわの一本一本が、知恵の川なのだ。
僕はよく、祖母の顔に手を触れてみたが、感触は見た目とはまったく違っていた。
祖母のしわは、彼女の抱擁と同じくらい、柔らかくて温かかった。
祖母は九四歳で死んだ。晩年はアルツハイマー病を患い、ほとんどのとき、意識は別の世界に遊んでいた。死の直前、僕は祖母のもとに駆けつけ、九ヶ月になる息子を会わせた。
僕がベッドのかたわらにひざまつくと、スピリットたちが特別な贈りものを与えてくれた。
五分間、祖母の意識が完全に澄みきって、正気に戻ったのだ。
「おばあちゃん」
僕は祖母の耳もとでささやいた。
「僕だよ」 
「ニタトービ、おまえかい」
祖母は年老いた美しい顔を、無数の笑いじわでくしゃくしゃにした。
「おばあちゃん、息子を見せに連れて来たよ」 
祖母は両手を伸ばし、歯磨きのチューブを絞り出すかのように、僕の息子をぎゅっと抱きしめた。
意識が澄みきっていたこの間、祖母は、命の環が僕の息子を彼女のところへ運んできたのを知っていた。
僕たちはいっしょに座り、三人は、環の中でひとつになった。
祖母はとても安らかに死んだ。少なくとも僕は、そう信じている。


祖母の柔らかなしわ・・・ローリー・エルダー(チョクトー族)より


___________________________


この本が、ネイティブ・アメリカンの「声」を集めたほかの本と少々違う点は、登場する人々の多くが、
元来、勇士でも、スピリチュアル・リーダーでもなく、ごく普通のネイティブ・アメリカンたちだということです。
語り手は時には若く、時には老人で、アルコール依存症や、拒食症で苦しんだ人もいれば、
ユーモアと創造力に富んだ人生を歩んだ人もいます。
ですから見方によってはこの本を「時代の証人」たちの証言を集めたものだと
言うこともできるかもしれません。
自分たちがたどってきた人生を、それぞれの視点から、とつとつと、正直に、
人に何かを教えようという意気込みすら持たず、静かに語っているからです。
しかし、まさにその気負いのなさゆえに、そのひとたちの人生の背景に見え隠れする時代の流れの底から、彼らを支えてきた偉大なる哲学のようなものが、言葉ではない言葉として響き渡ってきます。
そしてその響きこそが、この本を証言集以上のものにしている何かなのです。
現在、私たちはとてもきわどい時代に暮らしています。
多くの人たちが、誇りや愛や勇気を失った虚ろな心を抱えて、右往左往しているかのように見えます。
子供たちも大人たちも、空洞化した心をもてあまし気味で、中にはやみくもに宗教に走ったり、
人間としての道を踏み外す人たちさえいます。
こんなときに、単なる頭でっかちの、経験に裏打ちされていない言葉ではなく、
現実に自分たちの文化の危機に直面し、時代の荒波をくぐり抜けてきた人々の
生身の声に耳を傾けるのは、とても意味があることではないでしょうか。
そしてその語り手たちを支えてきた大きな何かに気がつくとき、
人はもっと本当の意味での強さとやさしさを持てるはずです。

本書に出てくる多くの人々は、ネイティブ・アメリカンの哲学に立ち返ることで、
本来の自分というものを見いだしています。
けれども、ここで彼らが伝えているのは、単に独自の文化に戻れと唱える
ちっぽけな民族主義などではなく、それを超えた、もっと壮大な何かです。

その何かを一言で説明することはとてもできません。
だからこそ、このようにたくさんの人たちが語るさまざまな人生を通して、
そこから自然に浮かび上がってくるものを理解する必要があるわけです。
彼らの話を静かに聞き終わったとき、人はそこに一陣の風が吹き渡るのを感じるでしょう。
そしてその風のささやきに耳を傾けるとき、答はそこにあります
ヴィジョン・クエストに出かけたネイティブ・アメリカンが、
静かに耳を澄まして、スピリットのささやきに答を聞くように・・・。


ハーディング・祥子 本書「訳者あとがき」より引用
[PR]
by paris-texas_press | 2009-08-08 08:08 | マダムみこ




宮崎市霧島3-133にある雑貨・家具・お洋服・骨董などのセレクトショップ★ギャラリーカフェ併設★                ムッシュ&マダムへのお手紙は gion3@ joy. ocn. ne. jpまで
by paris-texas_press
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリ
パリテキサスショップデータ
パリテサキス★新着情報
ムッシュの古道具
フランスの記憶
京都の記憶
沖縄の記憶
旅の記憶
ムッシュ木村
マダムみこ
スピコ店長
アキのひとりごと
以前の記事
2017年 09月
2017年 06月
2017年 04月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 06月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
ライフログ
その他のジャンル
ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
<< 禊ぎ | 御礼申し上げます >>